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薄膜界面制御された水素化物薄膜電池を用いた常圧高温超伝導体の創製
物質理工学院 応用化学系 助教 清水 亮太

200Kを超える高温超伝導が硫化水素やランタン水素化物において報告され、高温超伝導体探索の新たな潮流が生じています。ここでの主役は、これまでの「酸化物」ではなく「水素化物」ですが、200万気圧という超高圧が必要であることから、実用性についてはまだ乏しいのが大きな課題です。そこで我々は、「水素化物薄膜合成」、「薄膜・界面制御技術」、「固体電気化学」の知見を融合した「水素化物薄膜電池」を実現することで、水素化物における常圧下での高温超伝導の発現を目指しています。この超高温超伝導が実現し、損失ゼロの送電によるエネルギー問題の解消や超高速量子コンピューティング応用を通じた巨大なインパクトを産み出すことが最大の目標です。

我々はこれまで、「機能性酸化物薄膜の合成・物性制御」、「薄膜Li電池による界面設計を通じた超高速充放電」などの研究を行ってきました。一見すると本提案との関連がわかりづらいのですが、「水素化物薄膜」というキーワードにこれらの知見を組み込むことで、新たな融合分野の開拓を目指しています。これまでに、チタンやマグネシウム、イットリウムなどの高品質かつ方位のそろった水素化物薄膜の作製に成功しました。今後は、パラジウムやマグネシウムの金属水素化物薄膜を電極とする「水素化物薄膜電池」を作製し、結晶歪みや水素の配位構造・含有量・荷電状態を自在に操ることで、バルクでは実現不可能な準安定相を常圧下で実現し、新奇高温超伝導体の創製へと展開する予定です。


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