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「アダプティブコンピューティング研究推進体-ACRi」のご紹介

東京工業大学は、2020年4月1日に、アダプティブコンピューティング研究推進体-ACRi (アクリ) *1を設置し、15団体(2大学、13社)の協賛により活動を開始しました。ACRiは、FPGA*2を活用する高性能なアダプティブコンピューティング・システムの開発、及び、その設計を効率化するためのFPGA活用基盤の開発を目指した研究に取り組みます。また、開発したシステムを含むFPGA関連技術の普及のための事業にも取り組んでいきます。その一環として、2020年内に、FPGA検証環境の無償公開を計画しています。

ACRi設立の背景

高度な人工知能 (AI) やIoT (Internet of Things) を実現するためのコンピューティングシステム環境において、かつてない高いコンピューティング能力が必要とされています。これを達成するために再構成可能デバイスが注目されており、それらを用いることで大幅に性能向上させるアクセラレータの研究開発が活発化しています。

社会では、自動運転やエッジAI、5Gに代表される最先端アプリケーションでのFPGA活用を検討する場面が増えてきています。ただし、FPGAでの開発は広く浸透しておらず、開発環境と検証環境もまた多くの方には知られておりません。FPGAを使用して主要なアプリケーションを高速化し、FPGAの活用を広く共有すると、多くの業界の課題を解決することが可能になると思われます。

ACRiの目的

ACRiは高性能なアダプティブコンピューティング・システムの開発およびその設計を効率化するためのFPGAおよび再構成可能デバイスの活用基盤の開発と普及・拡大を目指して、次の研究テーマに取り組みます。また、研究成果の実社会への実装を目指して、開発したシステムを含むFPGA関連技術の普及のための情報提供や技術者がお互いに学びあえる仕組みづくりに取り組んでいきます。

主な研究テーマ

  • AI等の処理を高速化するFPGAアクセラレータの開発
  • IoTのためのFPGAアクセラレータおよびFPGAシステムの開発
  • 設計を効率化するためのFPGA活用基盤の開発

主な活動内容

  • FPGA検証環境の無償提供(2020年夏頃に公開予定)
  • ブログ、ワークショップ/セミナー開催等、最新技術を学べる環境の提供
  • オープンコミュニティによるエンジニア間の交流の場の提供

ACRiの発起人である東京工業大学 情報理工 学院 吉瀬謙二 准教授は、「FPGAはとても魅力的なデバイスですが、十分に普及していない現状があります。このような状況はFPGAの研究者、開発者、利用者、そして関連企業にとって好ましいとは言えません。FPGAをもっと使ってほしい、楽しんでほしい、その魅力に触れてほしい、FPGAを活用してほしい、そしてFPGAの利活用により多くの人々の健康や幸せにつながってほしいと思います。」、と述べています。

ACRiは、技術者や学生がお互いに学びあいながらFPGAを身近な道具として活用し、アダプティブコンピューティングによるイノベーションにあふれた世界を目指してまいります。

*1 :「ACRi(アクリ)」は「Adaptive Computing Research Initiative」の略称です。
*2 : FPGA (Field Programmable Gate Array) は、その論理的な仕様をプログラムすることによって変更できるアダプティブな半導体デバイスです。