研究データの有償提供に関する取扱規則の制定について
研究活動及び産業界でのデジタルトランスフォーメーションを加速するために、東工大では知的財産(著作物)ではないがこれに準じる価値のある研究データについて、これを企業等へ有償提供するに際しての規則を制定しました。ここに規則制定に至った背景と規則の概要をご説明します。
背景
研究活動のデジタルトランスフォーメーション
近年、ビッグデータやAIの活用、いわゆるデジタル技術がもたらす新たな価値と変革は、デジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれ、研究活動においても大きな進展を示すようになりました。これまで、研究者の勘・予測や膨大な実験の積み重ねで進めてきたさまざまな研究分野において機械学習、ベイズ推定、データ同化等の手法を活用された成果が数多く報告されています。
研究活動においてDXを加速するためには、データとそれを活用する技術が必須であることから、研究者の連携とデータを共有する仕組みが重要となってきます。このようなデータを巡る研究者の連携の具体的例としては、ライフサイエンス分野では京都大学が代表機関のAI創薬プラットフォームLINCが設立されています。また、物質・材料分野ではNIMSに材料データプラットフォームセンターが設置され、研究者が連携を進めています。
産業界でのデジタルトランスフォーメーション
産業界においてもDXによる事業変革が活発に進んでいます。DXの活用は企業単独では対応に限度があることから、デジタル技術を保有する企業とデジタル技術を利用したい企業が分野を横断して連携することが不可欠になっています。そこで、政府はデータの保護・利用の観点から知的財産関連の法律の改正を進めるとともに企業間等でのデータの利用に関する契約のガイドラインの整備も行ってきました。かかる動きは企業から大学への産学連携にも波及しつつあります。
産学連携の強化(規則の整備)
これまで東京工業大学においては、知的財産権であるデータベースやプログラムについては規則を整備して企業等へのライセンスを行ってきました。しかし、知的財産権に該当しないようなデータについては、経済的な価値があっても、その産学連携としての取扱の規則の定めはなく、研究者それぞれが、クリエイティブコモンズ等を利用して利用の条件を示した上で、研究過程で取得したデータを研究目的の範囲での利用等で公開するのに留まっていました。
そこで、産学連携を積極的に推進する研究者と企業のニーズを受けて、東京工業大学では知的財産ではないがこれに準じる価値のある研究データについて、有償で企業等に提供するための取扱規則の検討を進め、このたび規則を制定する運びとなりました。
企業等への研究データの有償提供に関する取扱規則のポイント
- 企業等から研究データ(著作物に該当しないもの)の利用(有償)の求めがあった場合は、研究者が大学に届出し、大学が企業とデータの利用許諾(有償)の契約を締結することで、データ利用許諾の対価を得ることが可能となります。
- 従前どおり、研究者が、研究活動として学外の研究者等に無償でデータを提供することや広く公開することについては、法律や第三者とのNDA等の契約に違反しない限りは、これを妨げるものではありません(届出等は不要です)。
- データの利用許諾の対価として得た収入の一部を研究室に研究費として交付します。