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研究の重点分野・戦略分野を紹介

研究の重点分野

東京工業大学は2017年に指定国立大学の指定を受けるにあたり、研究の強みを客観的に分析し、本学の底力ともいえる以下の3つの研究分野を「重点分野」と定め、この分野で世界をリードしていくことを中長期の研究戦略としました。

新・元素戦略

ありふれた元素を用いて知恵を絞って有用な機能の発現を目指す物質・材料の研究が「元素戦略」です。天然資源に乏しく、優れた製品を生む出すことで立国している日本ならではの国家戦略の一つで、この考えは15年ほど前に日本で誕生しました。東工大の元素戦略研究センター(2022年に元素戦路MDX研究センターへ改組)はこの元素戦略を推進する全国の拠点として設立され、これまで幾多の顕著な新材料を発見してきました。これらは、ありふれた元素に「構造」という工夫を凝らすことで生まれたものです。

最近では材料研究に新しい方法論が急速に取り入れられようとしています。情報科学やAIとの結合です。これによって、結晶粒界やアモルファスなどこれまで計算できなかった複雑な材料の研究が、はじめて可能になりそうな光明が見えてきました。「構造」の制御で革新的材料を生み出してきた元素戦略の蓄積に、これらの新しい研究手法を有機的に組み合わせることで、世界に誇れる材料の創出を目指すのが「新・元素戦略」です。

新・元素戦略関連の取組み

物質・情報卓越教育院

修士博士一貫の大学院教育プログラムにより、物質と情報をリンクさせ、情報科学を駆使して複眼的・俯瞰的視点から発想することで、独創的な物質・情報研究を進める「複素人材」の育成を行います。持続可能な社会を構築するための新産業創出を担う人材の育成を、企業に所属するプログラム担当者や特定国立研究開発法人物質・材料研究機構など連携先機関とともに推進します。

新・元素戦略関連の組織

元素戦略MDX研究センター

社会が材料に求めるものは「機能」です。機能と元素は物質の「構造」を介して結ばれます。構成する元素が同じでも、「構造」の工夫次第で大きく異なる機能が得られます。これが実際に使える元素の種類は数十に限られていても、社会が要求される多種多様な機能を実現できるゆえんです。「構造」の要素として何を設定するかは、研究者の腕の見せどころです。ナノ構造、表面、界面、欠陥、異常原子価状態はこの構造要素の例です。過去20年以上にわたりナノサイエンスやナノテクノロジーに関する精力的研究が世界中で展開され、現在までに多くの重要な発展が積み重ねられています。本センターは、前身の元素戦略研究センターの創設以来、有機ELテレビの世界初の実用化を可能とした半導体IGZOの薄膜トランジスタや温和な条件下でのアンモニア合成を可能とする触媒など、数々の新材料を開発してきました。 

 

ナノテクノロジーの最も興味深い点は不可能と信じられていたことを可能にするという、その高いポテンシャルです。よって、元素戦略構想(Element Strategy Initiative: ESI)はナノサイエンス、ナノテクノロジーの実践的な試みとして位置づけされます。大切なことは機能と元素との間の未知の関係を見出すことです。各元素の旧来のイメージを刷新することは我々のESIの究極のゴールとなります。そのゴールを目指した研究を本センターでも進めています。

統合エネルギー科学

これまで培ってきた全固体電池や水素エネルギーを活用した再生可能エネルギーシステムや、革新的な要素技術・システム技術を磨き、エネルギーの安定供給と経済性を有した炭素・物質循環社会の実現に取り組んでいきます。これらを統合エネルギー科学として集約することにより、カーボンニュートラルを実現し、持続可能なエネルギー社会に向けた推進力を強化します。

統合エネルギー科学戦略関連の取組み

エネルギー・情報卓越教育院

エネルギー・情報卓越教育院は、エネルギーをビックデータのAI解析などによって賢く利用し、エネルギーコストやCO₂排出などのエネルギー利用の制約から解放された人間中心の持続可能なエネルギー社会への変革を目指しています。そのため「エネルギー・情報卓越教育課程」を円滑に実施し、もってエネルギーの多元的学理を極め、ビックデータサイエンスおよび社会構想力により、新しいエネルギー社会を変革・デザインする「マルチスコープ・エネルギー卓越人材」を養成することを目的としています。学院横断的に選抜されたエネルギー/情報関連の学生は、特色ある教育プログラムを修博一貫で履修するだけでなく、産学連携研究にも参画し、充実した経済的支援を受けることができます。

統合エネルギー科学戦略関連の組織

ゼロカーボンエネルギー研究所

ゼロカーボンエネルギーに基づく炭素・物資循環システムを構築しカーボンニュートラル社会の実現に貢献することをゴールとし、実現に必要な技術の研究開発を行います。
  

InfoSynergy 研究/教育コンソーシアム

本コンソーシアムは、AI解析やデータ科学を融合した「ビッグデータ科学」を多様に活用し、デジタル化による低炭素・脱炭素エネルギー社会への転換を主導することを目的としています。ビッグデータ科学の活用で新たな価値やサービスが創出され、人々がエネルギー選択や環境行動等を意識せずとも環境と経済を両立できる「アンビエントエネルギー社会(Ambient Energy Society)」の実現を目指します。 9つの研究重点分野にビッグデータ科学を取り入れ、産学連携で研究と教育を両輪で推進します。国内の企業、公的機関に加え、世界のトップ大学が参画しています。

ディジタル社会・デバイスシステム

IoTをはじめハードとソフトが融合した超スマート社会(Society5.0)や、未来社会実現のために必須となるデバイス基盤の開発を担う研究分野です。半導体集積回路、センサーデバイス、ミリ波・光通信・次世代移動通信等を支える通信デバイス、さらには電力・電源システムの中核部品であるパワーデバイスなど様々なIoTデバイス、これらのネットワークシステム、システム制御技術など、本学が蓄積したこれらの技術を融合させて、ディジタル社会デバイスシステムの世界的な拠点としてリードし続けます。

ディジタル社会・デバイスシステム戦略関連の取組み

超スマート社会卓越教育院

修士・博士後期課程を一貫した学位プログラムにより、フィジカル空間技術とサイバー空間技術にとどまらず、量子科学や人工知能などの最先端の科学技術をも融合できる知のプロフェッショナルを養成しています。

ディジタル社会・デバイスシステム戦略関連の組織

超スマート社会推進コンソーシアム

来たる超スマート社会(Society 5.0)を支えるリーダーを養成するために、人材育成から研究開発までを統合した次世代型社会連携教育研究プラットフォームを産官学が連携して共創することを目的として設立しました。
  

集積Green-niX研究・人材育成拠点

グリーン関連市場の創造と変革を目指して、低消費電力化、低環境負荷化という新たな製品・サービスとなる「グリーン貢献度」という指標を定義しました。これに基づき、半導体の材料、デバイス、回路、システムを研究し、さらに集積化技術により価値創造を可能にする統合的研究開発及び人材育成スキームを確立し、日本産業の復興と地球環境保全の両立を目指します。

研究の戦略分野 

重点分野だけでなく、これからの社会に必要とされる分野で、本学においてそれを推進する研究力が十分に見込める分野を「戦略分野」と特定し、様々な研究プロジェクトを企画し、当該分野の研究推進を全学的かつ戦略的に実施していくこととしました。

Holistic Life Science (統合的なライフサイエンス)

ライフサイエンス やバイオテクノロジーに関する科学と技術の進展をはかり、これにより人や地球にやさしいバイオ駆動型の社会、つまりバイオファースト社会を実現する分野です。本学の強みである数理・物質を基盤としながら生命現象・生命情報・地球生命の本質的理解に取り組み、持続可能なエコシステム構築と新たなグリーン革命への展開を目指します。

Sustainable Social Infrastructure(次世代の社会インフラ)

人生100年時代の安全・安心で一人ひとりの幸せを支える次世代の社会インフラを構築しようとする研究分野です。東工大は次世代の社会インフラの実現に向けて、4つのグローバルな社会課題 -「レジリエント社会の実現」、「地球の声のデザイン」、「スマートシティの実現」、「イノベーション」- の解決を目指します。東工大の文と理にわたる研究力と企業・産業の知とエネルギーを融合し、研究成果の社会実装を通じて、人類社会の持続的な発展に貢献します。

Cyber Physical and Social Systems (CPS2)

社会の様々な単位で、実世界(Physical空間)と情報空間(Cyber空間)を高度に連携・融合させることにより、新たな社会的価値(Social Value)をもつシステムの創出を目指す研究分野です。ここでは、社会科学の知見とともに、近年のデジタルツインに代表される膨大なデータ処理能力を前提とした理学・工学の発展と、実世界を意識した新たな理論・データ解析/処理方法、センシング技術(P to C)やアクチュエーション技術(C to P)の開発により、実世界の解析・予測・最適化・制御を実現し、社会的課題の解決を目指します。

Cyber Physical and Social Systems (CPS2)関連の組織