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2019年度「東工大挑戦的研究賞」受賞者のご紹介

本学の優秀な若手研究者としまして、2019年度「東工大挑戦的研究賞」を受賞しました10名をご紹介いたします。「東工大挑戦的研究賞」とは、本学の若手教員の挑戦的研究の奨励を目的として、世界最先端の研究推進、未踏分野の開拓、萌芽的研究の革新的展開、または解決が困難とされている重要課題の追求等に果敢に挑戦している独創性豊かな新進気鋭の研究者を表彰するものです。特別に優れていると評価された3名は「末松特別賞」にも選ばれました。
今回は、10名の詳しい研究内容をご紹介いたします。ご興味のある企業の皆様は、お気軽にご一報下さい。今後の共同研究等への発展のお役に立てば幸いです。

2019年度「東工大挑戦的研究賞」授賞式-独創性豊かな若手研究者10名を表彰-|東工大ニュース

受賞者との記念撮影(9月5日) 受賞者との記念撮影(9月5日)
授賞式の様子(9月10日) 授賞式の様子(9月10日)
末松栄誉教授の祝辞 末松栄誉教授の祝辞

正木 慶昭 生命理工学院 生命理工学系 助教

末松特別賞

RNaseH 依存オフターゲット効果を抑制する化学修飾核酸の開発

核酸医薬品は、化学合成により製造された核酸を用い、主にRNAを標的とすることができる医薬品です。どのようなタンパク質も、翻訳される前のRNAの段階ではAUGCの並び順が異なるだけのため、原理的にはあらゆるタンパク質を標的にできる医薬品の形態です。また遺伝性疾患に多く見られるスプライシング異常の修正など、核酸医薬品特有の治療アプローチが可能であるところも魅力的です...続きを読む

片瀬 貴義 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 准教授

末松特別賞

低次元半導体の特異な電子構造を利用した熱・電子機能性材料の設計と実証

酸化物のようなイオン性の強い無機結晶の殆どは電気絶縁体であり、能動的な電子機能は望めないと考えられてきました。一方で、イオン結合と共有結合が混在する無機結晶では、InGaZnO4やLaCuOSeのように、自然の層状結晶構造中に量子井戸類似の低次元構造(自然量子構造)を持つものがあり、通常のバルク材料には無い、新しい光・電子機能が見出されています...続きを読む

吉田 啓亮 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 助教

末松特別賞

レドックスを基盤とした新規の光合成制御ネットワーク

植物は光合成によってバイオマス生産を達成している。移動能力を欠く植物が絶えず変動する地球環境でどのように光合成を制御しているのか、その解明は植物基礎科学の中心的課題である。また、その理解は植物の高機能化のための指針を与え、例えば農業現場における作物・穀物の収量増加を可能にし得る。すなわち、食糧資源の確保、代替エネルギー開発、地球温暖化対策といった喫緊の社会的要請に応えるためにも重要な課題である...続きを読む

小野寺 有紹 理学院 数学系 准教授

自由境界問題の力学系的解析

自然科学における数学の重要な役割のひとつは自然現象および社会現象の数理的原理の解明です。私の専門分野である偏微分方程式論では、現象を数理的モデルである微分方程式として定式化し、その解析を通じて個々の現象を解明することを目的とします。このとき、数理解析の主たる特徴は、数多ある微分方程式をその構造にしたがって分類し、単純化・抽象化された指導原理によって、それらを統一的に理解する点にあります...続きを読む

藤岡 宏之 理学院 物理学系 准教授

η'中間子で探る真空の構造と質量の起源

「身の周りにある物質はなぜ質量を持つのか?」これは、物理学における重要な問題の一つである。素粒子が質量を獲得する仕組みとして1964年に提唱されたヒッグス機構は、2012年に大型ハドロン衝突型加速器LHCにおいてヒッグス粒子が発見されたことにより、その正しさが実証された。ところで身の周りの物質は原子から構成されており、その原子は原子核と電子から成り立っている...続きを読む

安藤 吉勇 理学院 化学系 助教

高次構造天然物の合成を指向した光照射を契機とする動的立体化学制御法の開発

有機合成化学は「ものづくり」の学問であり生命科学や材料科学などのあらゆる分野へ物質を供給する基盤である。薬や香料、プラスチックや液晶など有機合成により供給された物質は、世界を豊かにするための一端を担ってきた。一方、これまで世に供給されてきた化合物は、合成の容易な平面性の高い物質が主流であった。これは、合成が容易であれば迅速に評価が可能であることと、世界中へ供給するための大量合成も簡便であるためである...続きを読む

山岸 昌夫 工学院 情報通信系 助教

実代数的二層型最適化の提案と信号処理アルゴリズムへの応用

最適化に基づく信号処理手法の多くは,信号処理に現れる諸問題を(単層の)最適化問題として定式化し,その近似解法を信号処理アルゴリズムとして活用するものである。これらの手法は,推定対象の「観測情報」と「先験情報」を同時に活用する柔軟な枠組みとして,スパース信号処理やデータサイエンスなどの発展において中心的な役割を果たしている...続きを読む

鈴木 耕太 物質理工学院 応用化学系 助教

機械学習によるイオン導電特性予測を指針とした新規リチウム導電体探索

安全性、信頼性に優れる全固体型のリチウム電池の実現が望まれています。その実現の鍵となるのが、固体内を高速でリチウムイオンが拡散できる物質、つまり高性能な固体電解質材料の開発です。しかし電解質材料の開発には膨大な時間と手間がかかり、10年スケールで新物質が見いだされます。そこで我々は、古典的な固体化学の考え方に基づく物質探索に機械学習を融合させた、新しい材料探索法の開拓に取り組んでいます...続きを読む

田中 祐圭 物質理工学院 応用化学系 助教

先進医療に向けた金ナノ粒子合成制御ペプチドのデザインモデル構築

金ナノ粒子は安定性が高く毒性の低い複合機能有価材料として、特に先進医療分野で注目されている。一方で、体内に投与された金ナノ粒子の標的部位への集積化に課題があり、標的に応じて粒子の形態(形やサイズ)を最適化する必要性が指摘されている。しかしながら、金ナノ粒子の形態制御に寄与できる分子種の数が限られており、様々な形態の金ナノ粒子を「自在」かつ「精密」に合成制御できる手法は確立していない...続きを読む

安井 伸太郎 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 助教

強誘電体を用いた超高速充放電可能なリチウムイオン薄膜電池の創成

電気自動車(EV)や電子デバイスまで、それらの動力源である二次電池は我々の生活に必要不可欠になっている。リチウムイオン電池の問題点の一つに充電する際に長時間かかることが上げられる。また高速で充電を行う事によって電池は劣化し、繰り返し使用する事が難しくなる。これらの問題点は、活物質と電解質の界面において副反応が起 きることで析出する相(固体電解質界面、 SEIと呼ばれる)が、リチウムイオンの拡散を阻害することで起こる...続きを読む